- 内視鏡の看護師って何やってるの?
- 内視鏡の看護師はきつい?
- 内視鏡って私も大丈夫かな?
こんなお悩みを解決します。
編集者は内視鏡看護師として約20年従事し、消化器内視鏡技師歴18年です。
内視鏡のことならおまかせください!
徹底的に解説していきますね。
この記事を読めば内視鏡で働く看護師の仕事内容や将来の目標がわかり、ご自身に向いているかどうか判断をする材料にできます。
記事の前半では内視鏡のことから仕事内容、看護師の役割、1日のスケジュールなどの全体像を解説し、後半では内視鏡看護師の魅力やおすすめする看護師、取得可能な資格について解説しています。
内視鏡室はどんなところ?
まず内視鏡室について説明します。
病棟や外来とは違う特殊性があるのでよくわからない方の方が多いでしょう。
内視鏡室は、内視鏡を使って検査や治療をする場所です。
主な検査や治療は以下のようなものがあります。
内容によってはX線透視装置も使います。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
- 小腸内視鏡検査
- 小腸・大腸カプセル内視鏡検査
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
- 超音波内視鏡検査(EUS)
- 気管支鏡検査 など
- 内視鏡的消化管止血術
- 内視鏡的食道静脈瘤結紮術
- 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペク)
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
- 内視鏡的粘膜剥離術(ESD)
- 内視鏡的ステント留置術
- 内視鏡的胆管結石除去術
- 胃ろう造設術 など
内視鏡室で働いているスタッフには、施設の規模や機能により多くの職種が所属している場合もあります。
- 医師
- 看護師
- 臨床工学技士
- 臨床検査技師
- 薬剤師
- 洗浄員
- クラーク など
このようにさまざまな職種が関わり合い、内視鏡を使用して検査や治療を行う場所が内視鏡室です。
内視鏡看護師の仕事内容
それでは内視鏡で働く看護師の仕事内容をご説明します。
仕事内容がわかるとなんとなく内視鏡室で働く時のイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
鎮静下での経口胃カメラをする場合の一例で説明していきます。
検査・治療前の対応
検査・治療前は主に物品の準備と患者の対応です。
対象 | 具体的内容 | |||
---|---|---|---|---|
物品 | *検査前は、内視鏡検査や治療が行えるように必要物品を準備する必要がある ・内視鏡や処置具、前処置薬、鎮痙薬、鎮静薬など | |||
患者 | ・患者確認 ・カルテや問診にて、禁忌薬、抗血栓薬内服の有無、胃カメラ経験有無などを確認する ・ルート確保 ・胃内有泡性粘液を除去する薬を飲ませる ・咽頭麻酔をする ・検査台に臥床させ内視鏡挿入に適した体位を取らせる ・検査中に関するオリエンテーションを実施する ・鎮静薬を投与する |
検査・治療中の対応
検査・治療中では、主に患者の安楽への援助と医師の介助を行います。
対象 | 具体的内容 | |||
---|---|---|---|---|
患者 | ・内視鏡の挿入に伴って声かけを行いながら、背中もさすり少しでも安楽に感じることができるようにする ・嘔吐反射が強い場合や鎮静の効果が薄い時などは、鎮静薬の追加や検査台からの転落予防に努める ・血圧、心電図、SpO2などを観察し変化に対応する ・口腔内に貯留物の吸引 | |||
医師 | ・色素散布時の介助 ・生検鉗子を使用して病変部から生検する際の鉗子操作 ・採取した検体の処理 ・必要時、適切な処置実施の介助(物品準備と処置具の操作) |
検査・治療後の対応
検査・治療後は、患者の対応と物品の片付けを行います。
対象 | 具体的内容 | |||
---|---|---|---|---|
患者 | ・鎮静から覚醒するまで回復室で安静させる ・バイタルサインの観察や輸液管理 ・安静解除の基準に沿って安静解除 ・絶飲食時間やその他説明事項の説明 | |||
物品 | ・使用物品を片付ける ・検査室内の清掃 |
記録
検査を担当した看護師は必ず記録を残します。
- 使用薬剤
- バイタルサイン
- 患者の様子
- 検査・処置内容 など
記録は次回の検査時に役立ったり、病棟との継続看護に役立ったりします。
さらに問題が発生した時には、ご自身を守るための大事な証拠にもなるので侮れません。
検体の管理
採取した検体はとても大事なものです。
検体の扱いによってはきちんとした診断ができなくなるので注意が必要です。
さらにラベルや伝票を出して貼付する際に
- 名前の間違い
- 部位の間違い
- 検体の取り違え
- 生検数の間違い
といったインシデントが発生することもあるので、ダブルチェックをして病理検査室に速やかに提出します。
内視鏡の洗浄・消毒
内視鏡の洗浄・消毒も大事な仕事内容です。
内視鏡は1回使用するたびに入念に洗浄して、消毒薬で消毒をしないと次の患者には使用できません。
ここできちんと洗浄・消毒ができていないと汚染物質が残ったままとなり、感染の媒体となってしまいます。
内視鏡の種類に合わせて洗浄に使用する物品や方法が違ってくるため、しっかり技術を習得することが必要です。
ちなみに、水を使用しますので不適切な取り扱いをすると内視鏡が故障してしまい、数十万〜数百万円の修理代が発生するので注意してください。
内視鏡機器・周辺機器の点検
内視鏡は精密機器なのでちょっとしたことで故障してしまうため、毎日点検をする必要があります。
患者の体内に内視鏡が挿入されている状態で機器の不具合が生じてしまうと、検査の続行不可能や内視鏡の再挿入といった苦痛を与えてしまうことになります。
日々の点検を怠らず、少しでも異常を感じた時は業者の点検が必要です。
検査説明
施設によっては、内視鏡を担当する看護師が次回の検査説明を行うことがあります。
そのほかは
- 検査前のオリエンテーション
- 検査後の注意点説明
が主なものになります。
内視鏡看護師の役割3選
ここでは、内視鏡看護師の役割を説明していきます。
看護師は患者が検査や治療が安全にスムーズに終わるように関わるのが役割です。
臨床検査技師や臨床工学技士、資格を必要としない洗浄員が働いている施設もあり、看護師としてできる役割は以下の3つに絞られます。
それぞれ解説します。
1.患者の精神的苦痛の軽減
看護師は患者の不安や恐怖感を軽減するよう働きかけます。
内視鏡検査・治療を受ける患者は恐怖や不安を抱えている人がほとんどです。
そこで検査前には
- 患者と目線を合わせる
- 患者の思いに共感する
- タッチングをする
- 日常会話をする
といった方法でコミュニケーションをとりながら、不安や緊張を緩和し検査に臨めるようにします。
検査中は
- 背中をさする
- 労いや共感、励ましの声かけをする
- 手を軽く握る
などで患者の心が落ち着くような働きかけが必要です。
胃カメラの時はずっと背中をさすってくれてありがとう
とっても不安だったから嬉しかったよ
後日、流を涙しながらお礼にいらした方がいました。
患者の精神的苦痛を軽減させる働きかけが大事なのがわかりますね。
2.患者の状態把握
内視鏡検査・治療中の患者の状態観察を常に行います。
バイタルサインの変動や急変のリスクがあるからです。
鎮静薬を使用する患者や緊急の患者は特に注意が必要です。
生体監視装置でモタリングを行いながら目や耳で…
- 顔色
- 皮膚状態
- 呼吸状態
- 体動
などを意識して観察します。
急変時に即座に対応できるスキルや環境の整備も大事になってきます。
3.検査・処置がスムーズに行くようなサポート
看護師は検査や処置がスムーズに行くようなサポートを行います。
スムーズに行く= 検査時間が短くなる
時間が短くなれば患者の苦痛軽減に結びつきます。
対象 | 具体的内容 | |
---|---|---|
患者 | ・内視鏡挿入がスムーズに行くような体位調整 ・体動時の体位保持 | |
物品 | ・必要物品を過不足なく準備する ・急に使用することになっても直ちに準備完了する | |
医師 | ・処置具を十分使いこなせる状態で介助する |
検査・治療がスムーズに行われ患者の苦痛を軽減させるためには、様々な面からのアプローチが必要です。
内視鏡室看護師の1日のスケジュール
内視鏡室での仕事の流れを知りたいな
それでは、内視鏡室の1日の流れを紹介しましょう
1日の流れを知ると、さらに内視鏡で働くことへのイメージがつきやすくなりますね。
今回は、総合病院の内視鏡センターをモデルとします。
始業・準備開始
当日の検査・治療の内容や予約人数の把握
前処置薬の準備
内視鏡の始業点検・内視鏡セッティング
看護師間のミーティング
検査開始 (胃カメラ、気管支鏡、EUSなど)
終了後に記録
検査・治療中は医師の介助や患者の対応
回復室では鎮静患者の対応
内視鏡の洗浄・消毒は検査終了ごとに実施
交代で昼休憩
大腸カメラ、ERCPへ移行
検査・治療中は医師の介助や患者の対応
終了後に記録
回復室では鎮静患者の対応
内視鏡の洗浄・消毒は検査終了ごとに実施
内視鏡は最終的にお手入れをして保管庫へ収納
その他物品の片付け
翌日の予約人数把握と物品不足がないかの確認
業務終了
終了していない検査は遅出者が対応
*下剤は別な部署や自宅で内服する施設もある
*出血などの緊急症例はその都度空いている部屋で実施
内視鏡看護師の給料はどれくらい?
内視鏡で働く看護師の給料を紹介していきます。
これまで説明した仕事内容が良くても気になるのは給料ですよね。
内視鏡看護師の年収は 約410万円です。
複数の転職サイトの求人から計算しました。(2024年2月現在)
厚生労働省によると、2022年の看護師の平均年収は約508万円でした。1)
これは、夜勤や残業の手当を含んでいます。
図1.看護師の平均年収
内視鏡で働く看護師は日勤で残業や夜勤がない勤務体制が多いため、全体の平均よりも低い傾向にあります。
ただ喜ばしいのは、消化器内視鏡技師の資格を保有していると手当がつく施設もある点です。
転職する時には年収が下がる可能性がありますが、消化器内視鏡技師の資格で手当がつく職場を探すといいでしょう。
内視鏡看護師の魅力3選
これから内視鏡看護師の魅力を3つご紹介します。
内視鏡の仕事内容は一般的な病棟では行うことのない特殊な業務です。
その特殊性ゆえのメリットが存在し、内視鏡に長く関わりたいと思う要因となっています。
それぞれ解説していきます。
1.ワークライフバランスをとりやすい
ワークライフバランスをとりやすいのが魅力です。
内視鏡室では基本的に日勤のみで日曜日、祝日が休みであることが多いです。
そして1日にできる検査数での予約を入れていますので、緊急患者が来ない施設は残業はほとんどありません。
- 夜勤は体力的にきつい
- 子育て中なので残業や夜勤はできない
- 子供と同じ休日がいい
といった希望がある方にとって、内視鏡室は体や家族に負担をかけずに働ける職場です。
2.専門的なスキルが身につく
内視鏡室で働けば、内視鏡に関する専門的な知識とスキルを身につけられます。
内視鏡の仕事内容は内視鏡室でしか習得することができません。
- 内視鏡そのものに関する知識
- 内視鏡の管理
- 内視鏡検査や処置介助
- 内視鏡にl関連する解剖や疾患の知識
病棟へ異動したとしても、内視鏡検査・治療を受ける患者の前後の看護に活かせますよ。
さらに転職時は、内視鏡経験者として求人の幅が広がります。
専門的な知識とスキルの証として、消化器内視鏡技師の資格を取ることも可能です。
3.治療に携わっている臨場感や責任感がある
内視鏡室では、治療や診療に携わっている臨場感や責任感が生まれやりがいを感じられます。
自ら処置具を操作して検査や治療に携わることができるためです。
内視鏡室の業務量調査をした研究1)では
内視鏡室にしか存在しない看護として
内視鏡検査治療介助【侵襲性】
をあげています。
どんなことをするのかな?
どのようなことが当てはまるのか例をあげてみますね。
項目 | 具体的内容 | |
---|---|---|
採取 | 採取(生検・細胞診)の準備・後始末 | |
処置具操作 | 各種処置具の準備・実施・後始末 | |
アセスメント | 合併症・偶発症の合併症・偶発症のアセスメント | |
内視鏡検査・治療の介助 | 色素散布 造影 局注 EUS 止血 異物除去 ポリペク・EMR ステント 胃ろう造設 結紮術 ドレナージ(内視鏡的経鼻胆管ドレナージ・イレウス管) 拡張・切開 砕石・採石 …の準備・介助・後始末 |
これらは内視鏡看護師の業務内容の7%を占めていました。1)
そしてこの内視鏡検査治療介助【侵襲性】が、検査や治療に携わっている責任感や臨場感につながっています。
侵襲的な業務であるため未経験の看護師にとってはストレスの高いものである反面、やりがいのある業務です。
1)大橋達子ほか:内視鏡検査・治療部門における看護業務量調査–内視鏡看護の特殊性を探る業務量調査,日本看護学会論文集. 看護管理 / 日本看護協会 編 35 324-326, 2004
きつい?看護師が内視鏡で働くデメリット3選
内視鏡で働くのはきつい?
内視鏡は大変やりがいのある魅力的な職場ですが、デメリットも持ち合わせています。
それは今までの看護師経験ではなかった特殊な仕事内容が多いからです。
それぞれ解説していきます。
1.覚えることが多い
専門性の高さから、技術に限らず機器や処置具の名前や使用方法など覚えることがたくさんあります。
検査内容や治療方法も、処置具など新しいものを取り入れていくので知識のアップデートが必要です。
専門性を高められる反面、それまでに覚えることがたくさん存在します。
まずは
- 内視鏡の構造や取り扱い方
- 内視鏡の洗浄・消毒の仕方
- 検査時、処置時の必要物品
- 処置具の扱い方
- 高周波装置の扱い方
- 内視鏡検査・治療に関連する解剖や疾患
を一通り覚えたら、さらに勉強会などで新しいことをインプットしていきましょう。
- 院内での医師や専門業者による勉強会
- 消化器内視鏡技師会主催の学会や研究会
このようにたくさん覚えることが必要であるため
内視鏡室はきつい
辞めたい
という看護師もいるのでしょう。
2.患者と関わる時間が少ない
内視鏡室では患者と関わる時間が少ないこともデメリットになります。
病棟とは違い、その場限りの対応になるためです。
患者と関わるのは検査前〜検査終了までで、鎮静をかければ患者としっかり話せるのはさらに限られた時間となります。
検査前の短い時間でどれだけ患者の情報を得られるのかがポイントです。
この情報でいかに患者の検査・治療に対する不安を軽減させ、検査中の看護に活かすことができるのか。
そういったスキルが求められます。
患者と関わる時間が少ないため、患者と入院期間を通してじっくり関わりたい看護師には不向きな職場でしょう。
3.業務が単調になりがち
内視鏡での業務内容は単調でルーティンワークになりがちです。
時間帯によって実施される検査は大体決まっているため、繰り返し同じ検査・治療につくことになります。
初めは業務に慣れるのに必死ですが、次第に同じことの繰り返しな上に患者と関わる時間が少ない点につまらなさを感じてくる看護師もいます。
患者の対応が「作業」になってしまってはいけません。
短い時間でも担当する患者一人一人が
苦痛が少ない状態で検査・治療を無事に終えられるように援助していく
との意識が必要です。
さらに、いつ患者の状態が変化するかわかりませんので密に観察を行なっていくことも大事です。
この点をしっかり意識できていないと、内視鏡の仕事内容がルーティンワークで
つまらない
きつい
といった思いを抱いてしまうことになります。
内視鏡におすすめな看護師3選
内視鏡の魅力・デメリットから、どんな看護師が内視鏡の仕事内容に向いているのかわかりました。
3タイプご紹介します。
1つずつ解説していきます。
1.ワークライフバランスを重視する看護師
ワークライフバランスを重視する看護師におすすめします。
これまで何度も話に出てきましたが、内視鏡室は日勤のみで、夜勤や残業なしで働けることが多い職場です。
そしてカレンダー通りの休日であることも多いです。
- 夜勤ができない
- 夜勤はしたくない
- プライベートの時間をしっかり確保したい
- カレンダー通りに休みたい
といった人には最適な職場でしょう。
2.専門性を高めたい看護師
内視鏡分野の専門性を高めたい看護師におすすめです。
内視鏡独自の仕事内容は内視鏡室でしか習得することができません。
*独自のものにマーカーを引いてみました
- 検査・治療の準備
- 検査・治療時の対応
- 検査・治療後の対応
- 記録
- 検体の管理
- 内視鏡の洗浄・消毒
- 内視鏡機器点検
- 患者説明
さらに
内視鏡室にしか存在しない看護である
内視鏡検査治療介助【侵襲性】
もあります。
これらを習得するだけで、内視鏡分野の職場にとっては大変貴重な人材となるのです。
3.ルーティンワークをこなすのが得意な看護師
内視鏡室の仕事内容はルーティンワークになりがちですが、それをテキパキとこなせる看護師におすすめします。
内視鏡室では、日々多くの症例数を時間内に終わらせる必要があります。
言い返せばどれだけ症例数が多くても、それをこなせれば業務終了ということです。
- 患者の情報収集
- 鎮静薬や鎮痙薬の準備
- 終了後の回復室への移動
- 使用薬剤などの処理
- 部屋の清掃
- 記録
- 検体の処理
- 内視鏡洗浄時のブラッシング
- 次の検査の準備(内視鏡、処置具など)
このような場面でスピードアップして行えるようになれば、症例をこなしていけます。
ルーティンワークだからこそ、次々と症例をこなしていけるスキルがあれば業務は早く終了しますよ。
未経験でも内視鏡看護師の仕事内容をこなせる?
おもしろそうだけど未経験だからな〜
内視鏡が未経験でも仕事内容をこなすことはできます。
「内視鏡」で求人を検索すると、内視鏡の経験者や消化器内視鏡技師資格保有者を募集していることが多い傾向にあります。
クリニックなどでは、人員が少ないため即戦力として働いて欲しい思いがあるのでしょう。
でも安心してください
未経験でも良いと明示されている求人もあります
そのような職場は、内視鏡専門の知識、技術がつくまで徹底して付き添ってくれる体制のところが多いです。
内視鏡の仕事内容を身につけるなら
人員が多く教育体制が整っている病院の内視鏡室や内視鏡センター
で集中的に内視鏡に触れる機会を作れる環境で働くのが最適です。
毎日集中的に実践を繰り返す方が圧倒的に技術を習得するのが早いからです。
しかも胃カメラや大腸カメラといった基本的なものから、ESD、ERCP、EUS、止血術などの治療の知識や技術も習得できます。
他の業務との兼務でも大丈夫という方は
消化器内科クリニックの外来や検診センターで少しずつ慣れていくのもいいでしょう。
ご自身にとって一番良い職場を選んでくださいね。
未経験者がスキルの習得にかかる期間
内視鏡の仕事内容を一人で行えるようになるまでの期間は
胃カメラや大腸カメラに限定すると「1〜3ヶ月」です。
内視鏡看護師の仕事内容は知識・技術を習得するのに時間がかかります。
例)胃カメラを3件/日、大腸カメラ3件/日程度受け持つ
仕事内容 | 習得期間 |
---|---|
始業点検〜内視鏡のセッティング | 1〜2日 |
前処置から検査終了までの対応 | 1週間 |
生検や高周波装置を使用しないポリペクの介助 | それぞれ10回程度 (1ヶ月〜3ヶ月くらい) |
内視鏡の洗浄・消毒 | 1週間 |
*生検や高周波装置を使わないポリペクなどの処置は毎回ではないため期間に変動あり
*症例数の少ない施設だと、経験する回数も少ないので期間が延長する可能性あり
未経験でも繰り返し実践することで、一人で内視鏡の仕事内容をこなしていけるようになります。
内視鏡室で看護師が取れる資格は?
内視鏡で働くと看護師が取れる資格は2種類あります。
内視鏡の知識と経験を評価してもらうもので、資格を持っていた方が有利に働くのではないでしょうか。
1つづつ説明しますね。
消化器内視鏡技師
経験を積んで受験資格を得て試験に合格すれば「消化器内視鏡技師」になれます。
消化器内視鏡について一定の知識と技術を持っていると評価されたことになる資格です。
このような制度があると目標を持って業務に臨むことができますね。
転職時には、内視鏡分野での採用に有利に働いたり資格手当が出たりする職場もあります。
<条件>1)
- 看護師系については看護師(保健師、助産師)、准看護師
- 日本消化器内視鏡学会認定の専門医が従事する施設で、過去5年以内に内視鏡に従事した勤務年数が満2年以上
- 「消化器内視鏡技師学会」または「消化器内視鏡技師研究会」に2回以上の出席
- 「機器取扱い講習会基礎編」に出席
- 医学講習会への参加か、日本消化器内視鏡学会認定専門医から医学講義を20時間以上受講
- 消化器内視鏡介助の症例数合計が年に100件以上で、日本消化器内視鏡学会認定専門医から証明と推薦が得られる
毎年1000名程度が合格しています。
条件を満たせれば資格取得に向けて挑戦してみてはいかがでしょうか。
カプセル内視鏡読影支援技師
もう一つの資格は「カプセル内視鏡読影支援技師」です。
カプセル内視鏡の読影に関して専門の知識と読影技術を持っていると評価されたことになります。
平成25年(2013年)から制度がスタートした比較的新しい資格です。
<条件>1)
- 看護師系については看護師(保健師・助産師)
- 准看護師は消化器内視鏡技師資格取得者のみ
- 日本カプセル内視鏡学会員の指導下で画像診断支援を経験した者で、小腸は10例/年、大腸は5例/年 の実績が必要
試験はなく実績のみで判断されて認定を受ける形になっています。
認定を受けているのは
小腸 261名
大腸 66名
しかいません(2023年9月現在)。
これはカプセル内視鏡を実施していても余程件数が多くない限り医師が読影を行うため、看護師が読影をする機会は少なく資格取得までに至る機会も少ないからです。
内視鏡看護師で働ける職場3選
どんなところで働けるの?
内視鏡看護師として働ける職場を3つご紹介しますね。
どこでも内視鏡を扱えるわけではありませんよ。
それぞれ説明していきます。
1.病院
1つ目は病院です。
総合病院でも消化器内科や大腸肛門科を専門にしている病院でも構いません。
それらには内視鏡室や内視鏡センターと言われる、内視鏡検査や治療を専門的に行っている部署があります。
<病院で働くメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
・教育体制が整っている ・症例数が多いため慣れるのが早い ・検査だけではなく治療も行っており知識や技術を多く学べる | ・スタッフが多くわからないことを聞きやすい・覚えることがさらに多くなる ・緊急処置では患者の状態が急変することがある ・施設によっては残業やオンコール体制がある ・他の部署へ異動になる可能性がある |
検査も治療もこなしていくには病院に勤務するのが一番です。
2.クリニック
2つ目の職場はクリニックです。
中でも、消化器内科や内視鏡専門のクリニックなら内視鏡を取り入れており症例数も多いでしょう。
<クリニックで働くメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
・検査や軽い治療(小ポリープ切除)のみであり、知識や技術の習得に時間がかからない ・出血やイレウスなど緊急症例はない | ・平日の日勤のみである・症例数が1〜2名程度と少ないクリニックもあり経験が積めない ・胃カメラのみ、大腸カメラのみ など限定的な検査しかやっていないクリニックもある |
基本的なことだけでも習得したい方にはクリニックがおすすめです。
3.検診センター
3つ目の職場は検診センターです。
健診で胃カメラや大腸カメラを取り入れているところがあります。
<検診センターで働くメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
・健康な人が対象 | ・採血など他の業務と兼務することがある ・胃カメラしかしていない施設もある ・治療の知識や技術は学べない |
基本的に健康な人が対象なので、患者が急変するリスクも少ないです。
他の業務と兼務しながら少しずつ内視鏡に慣れていきたい方に。
転職時に確認すること3選
内視鏡看護師へ転職する時に確認しておいた方がいい内容を紹介します。
入職してから知らなかったとならないように注意してください。
それぞれ説明していきます。
1.残業やオンコール体制があるか
残業やオンコール体制、遅出体制があるのかを確認しましょう。
ワークライフバランスに関わってきます。
特に、出血などの緊急の内視鏡検査を行うことが多い病院は注意してください。
また、夜勤はなくてもオンコール体制で待機中ずっと心が落ち着かない状態になることもあります。
勤務体制や緊急症例の受け入れ状況などについて確認してください。
2.教育体制が整っているか
未経験者に対する教育体制が整っているか確認しましょう。
内視鏡の仕事内容は看護業務だけではありません。
内視鏡の機器取り扱いや管理などの知識・技術も習得する必要があります。
- 教育担当者がつく
- マニュアルがある
- 段階的に技術を学べるようにスケジュールが組まれている
- スキルチェックリストがある
入職時のフォローから消化器内視鏡技師の資格取得支援まで行なっているような職場ならなお良いですね。
3.感染対策をさせてもらえるか
患者に対して感染対策をするのはもちろんですが、看護師自身の感染対策をしっかり取れるのか確認しましょう。
- マスク
- ディスポ手袋
- ディスポビニールエプロン・ガウン
- ゴーグル・フェイスシールド
- ディスポキャップ
気軽に新しいものへ交換できるような環境でしょうか?
検査中でも手袋は適宜交換して次の動作に移らないと汚染を広げてしまいます。
ご自身が媒体となる可能性もありますよ。
また
- 内視鏡室では目に見えない小さな汚染物が飛散しており、感染のリスクがある1)
- フェイスシールドの裏面にも飛散している2)
との報告があります。
上部も覆われたゴーグルかフェイスシールドを装着しておかないと眼から感染してしまいます。
施設によっては感染への意識の違いや金銭的なことから十分な感染対策をさせてもらえないかもしれませんので、確認をした方がよいでしょう。
ご自身の安全はご自身でしっかり守ってくださいね。
1)坂本理美ほか:内視鏡室業務による眼部汚染調査-ATP+AMP測定法によるゴーグル汚染状況調査-,臨牀と研究 92 (7), 933-936, 2015-07
2)坂本理美ほか:ATP+AMP法を用いた内視鏡業務時の眼部への飛散汚染調査-フェイスシールド裏面の汚染状況調査-,日本消化器内視鏡技師会会報,70 , 86-89 , 2023-03
内視鏡の求人を探すのにおすすめな転職サイト3選
内視鏡の求人を探しやすい転職サイトがありますのでご紹介します。
どれも公式サイトの検索ページで「内視鏡(室)」の選択肢があるのですぐに検索できますよ。
それぞれ見てみましょう。
1.看護roo!転職|都市部に強い
\ 無料登録して求人を見てみよう /
看護roo!転職の基本情報 | |
---|---|
運営会社 | 株式会社クイック |
公開求人数 | 約89,000件 |
対応地域 | 全国 |
拠点 | 東京 大阪 名古屋 |
転職初心者に優しく、優れた条件交渉力が自慢です。
2.レバウェル看護(旧:看護のお仕事)|内視鏡の求人が一番多い
レバウェル看護の基本情報 | |
---|---|
運営会社 | レバレジーズメディカルケア株式会社 |
公開求人数 | 約158,000件 |
対応地域 | 全国 |
拠点 | 10ヶ所 東京本社 渋谷道玄坂 大阪堂島 名古屋 さいたま 広島 立川 船橋 横浜 札幌 (福岡未使用 ) |
豊富な内部情報で求職者に合わせた具体的なサポートを受けられます。
3.マイナビ看護師|面談で安心して相談
マイナビ看護師の基本情報 | |
---|---|
運営会社 | 株式会社マイナビ |
公開求人数 | 約69,000件 |
対応地域 | 全国 |
拠点 | 17ヶ所 銀座 新宿 大阪 札幌 名古屋 仙台 横浜 さいたま 群馬 静岡 新潟 京都 神戸 岡山 広島 福岡 鹿児島 |
非公開求人が多く、より希望に合った求人が見つかります。
まとめ
内視鏡で働く看護師の仕事内容について解説しました。
「きつい」「辞めたい」と思われがちなデメリットも、裏を返せば内視鏡の特殊な業務内容を獲得でき残業や夜勤もなく働ける職場を表していることになりました。
消化器内視鏡技師になるとの目標を定めることで、日々の業務に意欲的に取り組めるのではないでしょうか。
そして資格取得後も新しい知識や技術を勉強し続けることが必要な職場です。